雑談2008

(&2009)
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過去の雑談:2007年分

★あけましておめでとうございます。昨年のコンクールを機に結構色んな方々がこのHPを見て下さってるようで、しかしその割には相変わらず更新がいつも放ったらかしで申し訳ありません(笑)。何はともあれ、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

さて、年が明けたからといって特に今更書くことがあるわけではないのだけれど、せっかくなので12月のドキュメンタリーの感想を少々(えらく今更ですが…)。いやー、良く出来てましたね。手品はカットでしたけど(笑)。僕でも編集次第でまともな人間(?)に見えることがあるんだな〜、なんて思いながら楽しませてもらったのだけれど、番組全体のラストカットには不覚にも吹いてしまった。我ながらひっでぇ顔(笑)――てか、こっち向くな!鍵盤見ろ、鍵盤!
…えー、念のため、あの場面での動きを解説しておくと、その前のフレーズの最後が左から飛び込んでくる和音であり、必然的に重心は右寄りになっている。でもって、適度な余韻を残してペダルを切るためには足首だけでの動作より体重移動を利用した方がやりやすいため、右足にかかった重心を左後方へ逃がす動きを選択。ただし足腰と腹筋背筋だけだと必要な動きよりやや緩慢になるため、打鍵の反動で右斜め上方に跳ね上がっている腕を急速に体に引き付けることで動きを補助することにした。―というわけで、確かに本番で気合が入って少々過激化していたのは認めるが、断じて”ガッツポーズ”などではないのである。まぁ、最後に4人ずつ顔が写るところで僕だけなかなか出てこなかった時点で、何となく嫌な予感はしてたんですけどね(笑)。あと、ちょっと驚いたのは、ナレーションがベッキーだったこと。実は準備段階でコンチェルトのオケパートをお願いしていた大田佳弘先輩(気楽に伴奏とか頼んじゃってますが、実はこの人、かなり凄い人です。国立博物館でのアルカンは圧巻でした…)は何を隠そう「のだめカンタービレ」の『千秋の手の人』であり、取材のとき紹介すれば良かったな、と。だって、”ターニャ”がナレーションだとわかってりゃ、ねぇ…(何じゃそりゃ)。

…さて、結局長々書いちゃいましたが、今回はこの辺で。ではまた。

★またしても久々の更新…。とりあえず、この夏の出来事に関することを一気に書いてしまおうと思う(最近思うこと、っていうこのページの主旨に完全に反してる気もするが…)。時間順に書くので、コンクールの話は後半です。

スタインウェイサロン神戸での演奏会:この時は、プログラムの演奏時間としては約1時間だが、前半小〜中規模の作品が並んでいる区間で1曲ごとに解説めいたトークをはさむ、という挑戦をした(今までもちょくちょく喋ってはいたが、リサイタルプログラムでここまで色々話したのは初めて)。会場がコンパクトなため、当然マイクはなし。しかし…、元々声を張って喋るのが苦手な上、演奏直後は声がかなりかすれてしまうため、どうにも聞き取りにくい部分が多くなってしまった。また、フランクでのミスもいただけない。課題としていた、40分を超えたあたりからの集中力のマネジメントは比較的上手くいっていただけに、一瞬指の力の消耗度を読み誤り右手のパッセージが潰れてしまったのが残念であった。僕は奏法をかなり論理的に詰めている方なので、実は自分の身体能力をかなりの部分使い切る弾き方をしているんだと思う。それだけに、長いプログラムではより冷静に自分の状態を把握している必要があるのだろう。演奏会から得るものは毎回多いが、今回も非常に良い勉強になった。

ロビーコンサートin天理:今年はハイドンの音楽パフォーマンス(自己紹介もしくはプロフィールの詳説ページ参照)を含む古典派プログラム。トークで何回かスベったが(…)、おおむねうまくいっていたと思う。モーツァルトだけは、どうしても会場がザワザワする場所なので、長音で間を持たせられず(伸びてる音が聞こえない…)ちょっと苦労したけれど。これからも毎年楽しい企画を考えていきたいと思う。

音コン1次予選:ベートーヴェンのソナタは11&17番の第1楽章を選択、当日当たったのは17番(テンペスト)の方。今まではこういう場合大抵長調の曲が当たっていたのだが、珍しく短調の方になった(僕自身はどっちかというと暗く渋い曲が好きだから、大歓迎である)。それなりに自分らしい演奏が出来ていたとは思うが、楽器やホールを探りながらの演奏とあって、提示部がややぎこちなかったか。少しばかり傷もあった。ここを通過しないことには、2次以降に準備してある、自分の特徴に最大限合わせて組んだスペシャルなプログラムを弾かせてもらえない。やはりシビアだ。それにしても、よく通ったな…(汗)

2次:個人的には、この時の演奏が一番納得している。演奏順が最後の方とあって、既に楽器はかなり荒れていたが、予測が付かずコントロールし切れなかった音を逆にインスピレーションの源として活用していく、という理想的な循環が出来ていた。現在の僕に望みうるほぼベストの出来だったと思う。

3次:演奏順が後ろの方だと、2次と3次のインターバルが1日しかない。これは正直キツかった。日程とプログラムだけ見れば芸大の卒試なんかの方がよほど厳しいが、何しろ2次をちゃんと弾かないと次はないのである。始めから連続を予定していられる演奏会との最大の違いがここで、2次と3次は「まず20分、次40分」ではなく、「20分で全てを出し切った後、もう一度40分ベストを尽くす」なのだ(だって、全力出してないのに帰らなきゃいけないって、嫌でしょ?)。「コンクールは体力的にも精神的にも厳しい」というよく耳にする言葉を、今頃になって実感した次第である(遅っ…)。まあそんなわけで、演奏はお世辞にもベストとは行かなかった。モーツァルトと、今回のプログラムでフランクの次に思い入れのあった山田までは良かったが、肝心のフランク、特にプレリュードが今ひとつ。前日、疲れもあって練習時間を7時間くらいに抑えるつもりが、あそこをやっておきたい、これも確認したい、と結局8時間半も弾いてしまったのは明らかな調整ミス。本番で「やりたい」と思ったことに対して、どうにも体の反応が一歩遅れてしまう。大事故こそ起こさなかったものの、強音に押さえつけた汚い音が多く、表現もフランクの真骨頂であるはずの細やかな陰影よりもブロックごとの対比に頼りがち。終盤もやや勢いだけで押し切った印象は否めない。とは言え、2年前に卒試で弾いたときから自分なりに進歩した分はきっちり出せていて、「今自分に出来る一番良い音楽をする」という点では卒試のときの方が頑張っていたが、そのときと今回の3次の演奏、純粋にどっちが良いかと言われれば、断然今回だろう、というのは確かなのだけれど…。

本選:楽しかった!の一言。本当にアンサンブルを楽しめたし、前にこのページでも書いた「ズドンのド("ズ"じゃなく)に乗っかって弾く」というのもかなり改善されていたように思う。後からラジオで録音を聴いた反省としては(放送の情報をこのHPに上げるのを忘れてました…ごめんなさい)、時々思い切ってオケより先に出たところが少々「やりすぎ」だったことと、技術的に多少粗い部分があったこと。でも、オケも指揮も最高だったし、何より好きな曲を弾きたい放題弾けたし、もう後は何でもいいや…、と満足感に浸ってたら、!!まさかの1位!…誰よりも僕自身がびっくりしていた(笑)。何はともあれ、本当にいろんな人に感謝しないといけないな、と思う。でもって、今度は「何でコイツが1位?(怒)」とならないよう、これからずっと頑張らないといけなくなってしまった(汗)。今は、入賞演奏会の公演数の多さにビビりつつ、コンクールの準備の間滞っていた新しい曲の勉強もまた少しずつ進めているところである。何はともあれ、本当にありがとうございました!

★いやはや、更新がすっかり滞ってしまった…。原因はトップページを見てもらえれば分かると思うが、コンクールの準備で缶詰状態だったこと。しかし、まさかファイナルまで行ってしまうとは…!直前まで何度もレッスンして頂いた角野先生をはじめ応援していただいた方々に感謝するとともに、コンチェルトも楽しんで弾ければと思う。…と、あまり調子の良いこと言ってる前に、とりあえずリストの準備を頑張らないと。「何でこんなのが残ってるんだ(怒)」みたいなことにならんようにね(笑)

とりあえず、この更新空白期間に色々書こうと思ってたことも、今後ちょくちょくUpしていこうと思う。

★ジャズin芸大は、今年も楽しかった。昨年は邦楽とのコラボで、尺八の超絶技巧に感動したりしたのだが、今回はクラシック&現代音楽との融合がテーマ。意欲的に色々詰め込んだ結果プログラムが異様に長大化する傾向は相変わらずだが(笑)、内容の良さがその長さを吹き飛ばしてくれるのも毎年恒例である。来年以降も「7月第3土曜日」に続いていくはずだから、楽しみだ。何しろ、ゲストに呼んでくる演奏家やバンドは、身内向けに無料学生券の出る「奏楽堂でのコンサート」でなければ、なかなか手の出せる価格では聴けないところばかり(現金な話ですみません…)。聴かない手はないではないか。何たって、楽しいし。

★シューベルト連弾コンサートは、なかなかうまくいったんじゃないだろうか。まあ、肝心の自分の担当曲に関しては、冒頭で僕が作ったテンポが少々速すぎたためPrimoの秋田悠一郎君に相当な迷惑がかかったりと―ちゃんとフォローしてもらえたので助かったけれど(汗)―、細かいことを言い出すと色々あったが、演奏会全体としては非常に面白いものになっていたのではないかと思う。この「角野クラス連弾シリーズ」は今年で3回目で、僕は昨年に引き続き2回目の参加(一昨年は教育実習と重なって出られなかった)。既に夏休み前のイベントとして定着しつつある。加えて「秋田-喜多ペア」も昨年から不変だったので、かなり緻密なアンサンブルをすることが出来たと思う(ちなみに昨年はブラームスのハンガリー舞曲集から3曲を担当した)。シューベルトは、時代区分としてはロマン派に入れられることが多いけれど、まだ古典に軸足を残している作曲家でもある。そのこともあるのだろう、PrimoとSecondoの音楽の方向性のずれは、ブラームス以上に許されない気がした。正直、昨年から続いて組んでいて、お互い何となく相手の音楽作りが分かっているのでなければ、仕上げるのに数倍苦労したのではないだろうか。何はともあれ、今年も良い勉強をさせてもらった。いずれ出来上がってくるCDを聴くのが楽しみである。

★いやー、「インド音楽の魅力(in奏楽堂)」、良かった。「インド古典」は、以前ビデオで見かけて以来、一度はライヴで聴いてみたいと思っていたのだけれど、ついに奏楽堂でやってくれた(つまりタダの学生券が出る)。演奏も、アヌーシュカ・シャンカールを筆頭に、恐らく本場でもトップクラスと言われているであろう面々だから、申し分ない。…あれは感動する。「超絶技巧」が音楽の構成要素となってるのは、西洋の他にはインドだけ。圧倒的な技量でもって素晴らしい即興を聴かせてくれる。個人的には、「インド古典」のトップクラスの演奏は、音楽家でなくとも一生に一度はライヴで聴いておくべきだと思う。(←一度聴いてもらえば、これが決して大げさでないのが分かると思います!)

★ついにスーパーアグリがF1撤退…。数少ないプライベーターとして何とか頑張ってきたのだが、結果的に、最後はチームの母体ともいえるホンダにまで見放されてしまった格好で、どうしようもなくなってしまったようだ。そもそも、今のF1は参戦コストの高騰から大手自動車メーカーしか参戦できないような状態で、それを打開する改革も頓挫(恐らく、亜久里の計算が狂ったのもこのせいである)。ホンダとて、自らを含めた2チームの面倒をいっぺんに見続けるわけにいかない現状があったのは、致し方ないところではある。

――これからF1チームをやろうと思う人には、やらない方がいいよってコメントするかな。相談に来られたら。(記者会見での鈴木亜久里代表の言葉より)

確かに、「見通しが甘かった」と言ってしまえば、それまでである。しかし、F1はスポーツなのだ。ビジネス的な理屈「だけ」で物事が進んでしまって、本当に良いのだろうか?冗談半分とは言え、こんな悲しすぎる言葉が関係者から出てくる、なんてことが許されて良いはずはないと思うのだが…。

――(F1には戻って来ないという話について)レースができる環境だったら戻ってもいいけど、振り返った2年半はお金探しばっかりしていて…(中略)、それに疲れたかな。何か、レースができる環境で戻れるんだったら、戻りたい…かな。でもちょっと休みたいかな、今は。

本当に、お疲れ様。そして、ありがとう。

★先日、旧東京音楽学校奏楽堂で山田耕筰「スクリャービンに捧ぐる曲」を弾く機会があった。このホール、古いだけに(?)残響がほとんどないのだが、いかにも重要文化財、的な雰囲気がそれを補っていて、なかなか良い。さすがにあそこまで響かないと、一緒に弾いたドビュッシーの「版画」なんかでは、弾く側としては少々辛い面もあったのだが、山田に関しては、いわゆる「感動体験」というのをさせてもらった気がする。だって、館内の展示スペースに「ここから巣立った人!」ってことで写真やらシンフォニーの自筆原稿(ピアノスケッチ)やらが飾ってある張本人の曲を「その」ホールで弾いてるわけでしょ?これで感ずるものがない方がおかしい。演奏自体も上手くいっていたと思うが、今回は「場」からもらった力の占める割合がかなり高かったんじゃないかと思う。

★日本のF1チーム「スーパーアグリ」がピンチだ。元々弱小チームで、常に資金難と隣り合わせではあったのだが、今回頼みの綱だったマグマグループからの支援が白紙になり、今期どころか次のレースの出走すら危うくなってしまった。水面下での交渉が9割方まとまっており、チームもそれを前提として動き始めていただけに、なおさら打撃が大きかったようだ…。出資者が降りてしまったそうなので、マグマグループを責めることは出来ない。代表の鈴木亜久里も大変だと思うが、何とか乗り切ってもらいたいものだ。それにしても、参戦3年目にもなるこのチームに、日本から大口のスポンサーが未だに現れないのは、一体どうしたことだろうか(マグマグループはイギリスの会社)。確かに弱小のテールエンダーではあるが、このチーム、ファンや関係者からの人気は高い。何より、世界に11しかないF1”世界選手権”のチームの一つなのだから、宣伝効果も折り紙付きのはず。日本の企業には、世界の舞台で挑戦する日本のチームを応援する気がないのだろうか。それとも、”レース”と暴走族を結び付けて考えるような短絡的で甚だしい、そして悲しい誤解が今なおまかり通っているのだろうか(F1発祥の地ヨーロッパでは、日本で言うところの「天覧試合」になることも珍しくないというのに…)。いずれにしても、残念である。1ファンとしては、単に不況のせいだと思いたいところだけれど…。

★上野公園の桜。毎年、満開になるとかなり見事なものだが、せっかくなので、通りすがりに時々携帯で撮っていた写真をUpしてみた。(今はもうかなり散っちゃってますが…)







思ったのだが、桜の美しさって、写真にしてしまうとかなり損なわれている気がする。まあ、携帯で適当に撮ってるせいもあるのだろうが、やはりあの微妙な色合いは「現物」でないとダメなんじゃないか…、なんて考えてみたりもするのである。

秋篠音楽堂でのリサイタルは、かなり上手くいった方だと思う。実は直前に花粉症をこじらせて風邪みたいになってしまい(汗)、体力面に若干の不安があったのだが、やはり「火事場の馬鹿力」というやつなのだろう、これまでに長いプログラムを弾いたとき以上の問題は起こらなかった(休憩中は、ちょっと咳がぶり返したけれど)。僕は、秋篠音楽堂の雰囲気が好きだ。客席と切り離されて孤立した感じが全くなく、割と明るい雰囲気。本格的にリハーサルをやってみて分かったのだが、音響は中〜高音域の伸びが非常に良く、恐らくこれも「明るい」雰囲気を生み出しているのだろう。録音に基づく反省点としては、リスト『オーベルマンの谷』の終盤でもう少し冷静さを保って横のつながりを重視した表現が欲しかったこと(走ってるからあんまり気にはならないが、ちょっと「縦割り」だった)、フランク『前奏曲、フーガと変奏』の出だしで少しコントロールミスが目立っていること(元がオルガン曲で音が持続することを前提に書かれているので、ちょっとしたことで「歌」が途切れやすい。その割には丁寧さが足りなかったかもしれない)、といったところだろうか。他にも細かいことを言い出したらキリがないが、まあ少なくとも僕らしさは出ていたと思うし、自分が客席にいても「コラー、金返せ〜!」と思ってしまわないだけの最低限のクオリティは保てていたと思う(…甘いかな?)。また、客席の雰囲気も、細部のニュアンスまで汲み取ってもらえている、という感じで、非常に心強かった。準備段階も含め、お世話になった方々には感謝の一言に尽きる(平凡な言葉かもしれないが)。

去年の暮れにも書いていた、山田耕筰の「スクリャービンに捧ぐる曲」。その新全集と旧全集の譜面に、ちょっとした違いがある。細かいミスプリントは新全集では全て直っているのだが、1箇所、「これを直したのはまずかったんじゃないかな」と思える箇所が(下の写真参照、左旧、右新)。言うまでもないが、「正しい」記譜は右である。しかし左の配置、さすがに山田自身がこういう書き方を最初にしない限り、ミスプリでこうはならないのではないだろうか?(自筆譜は行方不明。)この曲で、山田は「前に出す」装飾音は小節線をまたいで書くなど、「オン・ザ・ビート」とは明らかに使い分けているし、この部分も、旧全集の記譜に従って弾いた方が音楽的にも断然良い(と思う)。変則的な記譜の処理は校訂者を悩ませるところであり、色んな意見があって然るべきだが、僕個人の意見を言わせてもらえば、このケースに関しては少し四角四面に「正しく」やりすぎているのではないかと思う。演奏者サイドからすると、作曲者の意図を含んでいる可能性が少しでもある限りは、理論的にまずい記譜でも(もしくは必ずしも本人がそう書いたとは限らなくても)、ヴァリアントで示すなどして出来るだけ残してくれた方が有難いのである。何しろ、過去の作曲家の音楽そのものに時空を越えて接するための手掛かりは、「楽譜」しかないのだから。
←旧全集 ←新全集

★下で触れた、腕の「跳ね上げ」を最も駆使しているピアニストの一人と思われる、ムストネンの演奏をYouTubeで見つけました。プロコの3番コンチェルト。レガートでもほとんど鍵盤に手が付いてない…。さすがに、僕があれをやると、ものの10秒で暗譜が全く分からなくなると思う(連続した動作として手に覚えさせることが全く不可能なので)。あの奏法で上手くいくのは、多分本人だけだろう。(Variationでピアノが出てくるのは1分15秒あたりです。)
Prokofiev Piano Concerto No 3 part 2 - Olli Mustonen

★いやー、大フィルとのコンチェルト、楽しかった。フランクのシンフォニック・ヴァリエーションを弾かせてもらったのだが、「ピアニスト孤軍奮闘」の曲でなく「一緒に音楽をつくる」曲にして、本当に良かった。指揮の飯森さんのアシストも完璧(この人、やっぱりスゴい…)。実は、さすがにちょっと動きすぎたかな?とも思っていたのだが(詳しくは自己紹介の「動作と音楽」のページを見て下さい)、後から録音を聴いてみると、あれだけ楽器を限界近くまで鳴らしきっていたにもかかわらず、「叩きつけた音」がほとんど無かったのは、嬉しい驚きであった(僕の気のせいでないことを祈る)。これは恐らく、ffでの打鍵後、指を鍵盤に留まらせず、鍵盤の跳ね返りにまかせて腕を大きく投げ出していたことによるところが大きいのだろうから、シャンドールの言う「大きめの動作が安全バルブとなる」ということが見事に実践されていたわけだ(プロフィールの「影響を受けた人物」ページの一番下参照)。さすがにリハーサルでは、オケの練習の邪魔になりそうだし、体力も消耗しそうなので、動きとしてはかなり抑えていたのだけれど(特に休符の後、自分の入りのタイミングを測る動作とか)、まあ本番では、「いいや、やっちゃえ!」と(笑)。滅多にない機会だし、好き放題弾かせてもらった(僕の場合、演奏自体もその方が良くなるしね…、あ、ちゃんと構成とか考えながらの「好き放題」ですよ、念のため)。コンチェルトに関する今後の課題としては、「思い切ってオケより後に弾く」ということだろうか。というのも、ピアノはオケのほとんどの楽器より鋭角的に音が立ち上がるので、結果としてオケの方が拍点の「幅」がずっと広くなっている。今回僕は、録音を聴く限り、主にその「幅」の前半のうちに音を出していることが多いのだが、これに「オケの音が立ち上がりきった瞬間」に発音する、という選択肢(分かり易く言えば、「ズドーン」というオケの響きの、「ズ」ではなく「ド」に乗っかる、ということ)が加われば、もっと良いアンサンブルが出来る気がするのだ。ただ、客席(1列目除く)と自分の聞こえ方は全然違うし、そもそも指揮者のタクトとオケの発音や、またオケの中でもパート間で、微妙なタイムラグがあるので、指揮とコンタクトを取りながら発音の微妙なタイミングを測るのは、相当難しいことではある(ピアノパートそのものの間合いが崩れたら元も子もないしね)。もしこのページを見て下さってる方で、本番とか放送を聴いた方がおられましたら、ゲストブックにでも感想(&苦情?)とか書いてもらえると嬉しいですね。

★それにしても、フランクはアルペジオが好きらしい(あ、ピアノ曲の話です)。「プレリュード、コラール&フーガ」のコラールや、「プレリュード、アリア&フィナーレ」アリア序奏の譜面を見た時点で、まあ見当が付くことではあるのだけれど、最近発掘した交響詩「呪われた狩人」や交響曲のピアノ4手編曲版(もちろん本人編曲。念のため)の楽譜にも、同じようなことをやっている箇所を発見!(ちなみに、アルペジオ担当はどちらのケースもSecondoです。)そもそもピアノという楽器は、構造上、音が発音されるたびに打撃音が入るので、音の多い和音を同時に打鍵すると音が「塊」になってしまい、和音の微妙な色合いが聴き取りづらくなる。フランクの音楽は「和声命」なところがあるので、やっぱりフランクとしては、和声の移り変わりをちゃんと聴き取ってほしかったんだろうな…。ただし、ピアノコンチェルトとなると、この手のアルペジオはあまり見受けられない。和声感はオーケストラの豊かな音色でカバーできるので、フランクとしては、むしろ「ピアノらしさ」を出すことに集中しているのかもしれない。

★約15年使い続けてきたメトロノーム(Bossの2代目ドクタービート)がそろそろ寿命に近づいてきたようだ。電池がほぼ新品にもかかわらず、起動してから液晶の数字が読めるようになるまでに約30秒…。ただ、半時間以内くらいに一度使っていれば、電源を切っててもすぐ使えるので、もうしばらくは頑張ってくれそうだけど。ちなみに新型は、どうも余計な機能が多い気がして、まだ買い控え中。