音コン(1位)

りあえず、コンクール関連では今のところ一番自慢できる経歴かなと思う。実はエントリーした段階では、3〜4回受けて1回くらい、たっぷり弾かせてもらえるセミファイナルに残れたら良いな、くらいの気軽さだったのだけれど、まさかのファイナル進出。いや、セミファイナルとファイナルの間にインターバルがなかったらコンチェルトかなりやばかったかも(汗)。以下は、せっかくなのでラウンドごとの経過も書いておこうかなと。

1次予選:ベートーヴェンのソナタは11&17番の第1楽章を選択、当日当たったのは17番(テンペスト)の方。今まではこういう場合大抵長調の曲が当たっていたのだが、珍しく短調の方になった(僕自身はどっちかというと暗く渋い曲が好きだから、大歓迎である)。それなりに自分らしい演奏が出来ていたとは思うが、楽器やホールを探りながらの演奏とあって、提示部がややぎこちなかったか。少しばかり傷もあった。ここを通過しないことには、2次以降に準備してある、自分の特徴に合わせて組んだプログラムを弾かせてもらえない。やはりシビアだ。それにしても、よく通ったな…(汗)

2次:個人的には、この時の演奏が一番納得している。演奏順が最後の方とあって、既に楽器はかなり荒れていたが、予測が付かずコントロールし切れなかった音を逆にインスピレーションの源として活用していく、という理想的な循環が出来ていた。当時の僕に望みうるほぼベストの出来…というか恐らく実力以上の「キレた」演奏だったと思う。バッハは平均律1巻f-moll、ショパンエチュードはOp.25-10、フランス枠にドビュッシー「月光のテラス」(前奏曲2巻7番)、ショパン以外のエチュードはスクリャービンOp.65-3、という構成。個人的には、ドビュッシーのラストからスクリャービンへのつながりが「並行5度」をキーワードにめちゃスムーズにいくのが、このプログラムの気に入っているところ。

3次:演奏順が後ろの方だと、2次と3次のインターバルが1日しかない。これがキツい。日程とプログラムだけ見れば芸大の卒試なんかの方がよほど厳しいが、何しろ2次をちゃんと弾かないと次はない。始めから連続を予定していられる演奏会との最大の違いがここで、2次と3次は「まず20分、次40分」ではなく、「20分で全てを出し切った後、もう一度40分ベストを尽くす」なのだ(だって、全力出してないのに帰らなきゃいけないって、嫌でしょ?)。「コンクールは体力的にも精神的にも厳しい」というよく耳にする言葉を、今更ながらに実感したラウンド。まあそんなわけで、演奏はお世辞にもベストとは行かなかった。モーツァルト(K.282)と、今回のプログラムでフランクの次に思い入れのあった山田(スクリャービンに捧ぐる曲)までは良かったが、肝心のフランク(プレリュード、アリア&フィナーレ)、特にプレリュードが今ひとつ。2次でハッスルしすぎたために指に若干疲労感があったのだが、前日の練習時間を6〜7時間くらいに抑えるつもりが、あそこをやっておきたい、これも確認したい、と結局8時間半も弾いてしまったのは明らかな調整ミス。本番で「やりたい」と思ったことに対して、どうにも体の反応が一歩遅れてしまう。事故こそ起こさなかったものの、特に終盤、強音に押さえつけた汚い音が多く、表現もフランクの真骨頂であるはずの細やかな陰影よりもブロックごとの対比に頼りがち。勢いだけで押し切った彫りの浅い演奏に近くなってしまった印象は否めない。とは言え、2年前に学部卒試で弾いた時点から進歩した分はきっちり出せていて、「今自分に出来る一番良い音楽をする」という点はともかく、卒試と音コン3次の演奏、純粋にどっちが良いかと言われれば、断然音コンだろう、というのは確かなのだけれど…。

本選:楽しかった!の一言。本当にアンサンブルを楽しめたし、大フィルとフランクを弾いた時の反省点「ズドンのド("ズ"じゃなく)に乗っかって弾く」というのも多少改善されていたように思う。後からラジオで録音を聴いた反省としては、時々思い切ってオケより先に出たところが少々「やりすぎ」だったことと、技術的に多少粗い部分があったこと。でも、オケも指揮も最高だったし、何より好きな曲を弾きたい放題弾けたし、もう後は何でもいいや…、と満足感に浸ってたら、!!まさかの1位!…誰よりも僕自身がびっくりしていた(笑)。何はともあれ、本当にいろんな人に感謝しないといけないな、と思う。通ると思ってなくて準備出来てなかったコンチェルトのレッスンを缶詰め状態でやって下さった角野先生と、オケパートのピアノでアンサンブルの練習に付き合って下さった大田佳弘先輩(ちなみにこの方、「のだめカンタービレ」ドラマ版の「千秋の手の人」だったりします。まさかドキュメンタリーのナレーションが「ターニャ」でのだめ被りするとは思いませんでしたが 笑)には特に感謝である。

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