恩師紹介

その他影響を受けた方々

角野裕先生

現在の師にして、最も尊敬する、まさに「恩」師である。音楽的に受けた影響も、計り知れない。僕の個人的な印象としては、「人物そのものが音楽的」といったところで、「音楽家」とは、こういう人のことを言うのだろう、と思う。出会いは講習会。「この部分、同じ作曲家のシンフォニーと似てるよね」なんて言いながら、いきなりそれを弾き始めてしまう(もちろん即席でのピアノ編曲)ような人には出会ったことがなかったので、かなりの衝撃であった。この時は、公開レッスンの他に、「ペダルの踏み方」のレクチャーも受講した…はずなのだが、何年経っても、未だに角野先生の非常に繊細なダンパーペダルの使い方には、遠く及ばない。「耳で踏むペダル」という言葉を本当に実感させてくれるピアニストでもあると思う。

そして何より、レッスンのスタイルとの相性も良かった。テクニックにせよ音楽づくりにせよ、指摘の根底にある理論や方法論を解説してゆくやり方が、言われたことをなるべく一般論化して応用しようとする僕の性格と非常によくかみ合っていたのだ(ちなみにご自身も「論理的に納得できないと嫌だ」という性格なのだそうだ)。もっとも、僕があまりに杓子定規な弾き方をすると、「音楽は理屈じゃないよ」と言われることはあるけれど(音楽は、基本的に自然の中に棲んでいるものである―by角野)。僕のように「どう弾くべきかは全て楽譜に書いてある」(逆に、「こう弾きたい」という明確な意思があれば、楽譜は自ずとそう見えてくる=そう弾くための根拠が見つけられる―by角野)と考えている人間にとっては、角野先生は最高の師匠なのだ。また、音楽のイメージを言語化して伝えることにも長けておられるので、レッスン中の言葉にはどこか指揮者のリハーサル(オケにやってほしい表現を瞬時に理解してもらう必要がある)を思わせるものがあり、良い意味で「乗せられて」しまうところも魅力である。よってレッスンの次の日、「昨日あんなにうまく弾けたのに」と落ち込むことも多かったりする(笑)。

ちなみに、チャイコフスキーの「弦楽セレナード」とブラームスの「悲劇的序曲」のピアノソロ版を角野先生自身が作成し、録音されたCDが出ているので、興味のある方は是非聴いてみて下さい。素晴らしい演奏です!!(…師匠を持ち上げてるわけではありません、念のため。影響を受けてる張本人の演奏なわけですから、純粋に音として聴いても僕が共感しやすいのは確かですが、それを差し引いても、自信を持ってオススメできる内容です)
芸大HP内での紹介

松井和代先生

テクニックの基礎は、松井先生につくっていただいたと言っても過言ではないと思う。最初のレッスン(中3)での「リズム練習の鬼になれ」という言葉は僕のピアノへの取り組み方を大きく変えるものであった。「機械的な」練習には賛否両論あるが、僕としては、「ピアノを弾く」という行為そのものに対して相当な才能がある人間でない限り、多かれ少なかれ「手に適度な負荷をかける」練習は必要だと思っている。「指を動かすためだけの練習はムダだ」というのは、「初めから指が動く人」の言い分であり、僕のように、技術的に突出した才能を持ち合わせていない人間には当てはまらない(テクニック上の才能を持っている器用な弾き手が有利な現状は、練習しないと全くと言っていいほど弾けない僕にとっては、かなり辛い…)。

また、自分以外のレッスンを門下生が受けることに対して非常にオープンに考えておられたことも、かなり重要だったと思う。今は「生徒」であっても、最終的には音楽への自分なりのアプローチを確立しなければならないのだから、音楽に「唯一の正解」など存在しない、ということを学び手が理解している限りにおいては、「出会い」は多い方が良いに決まっているのだから。

最後にもう一つ、僕が大切にしている松井先生の言葉。「(自分は)世界一下手だと思って練習し、世界一上手いと思ってステージに立つべし。」練習では自分を追い込むこと、そして一回の演奏に全てが懸かる本番では、最後の最後で必ず自分を信じること。この言葉は、「曲を隅々まで完全に把握しているからこその(一回限りの)即興性」を目指す、という現在の僕のスタイルの原点でもある。

田中美鈴先生

当時の音高の校長先生だった。と同時に松井先生を僕に紹介して下さった先生でもある。小柄で手も小さいが、それだけに指先の俊敏性には驚くべきものがあり、レッスンで、同じピアノなのに何度やっても先生と同じ音にならなかったのをよく覚えている。
☆田中語録@ズルズルベッタリ:フレーズ感がなく、締まりのない演奏。

Aノンベンダラリン:@と同義。

Bノッペラボウ:無表情で、何をやりたいのかさっぱり分からない演奏。
といった具合で(どんな具合やねん)、レッスンのテンポも良い。田中先生のレッスンを(無理矢理)総括するなら、「無責任な音を出さない=全ての音を意図を持って弾くべし」となろうか。言うまでもなく、ピアニストの最も重要な心得だ。

多美智子先生

僕がピアノを始めた当初(中1頃まで)は、ピアノの弾きとして生涯ステージに立っていきたいという漠然とした思いはあっても、そのための道筋は全く考えていなかったのだが、多先生との出会いをきっかけに本格的に音楽の道を志すこととなった。しかし、その当時の僕は精神的にも音楽的にも極めて未熟だったこともあり(もっとも、今なら「熟」しているかと言われると全く自信ないけれど)、度々多大なご迷惑をおかけしてしまったことは、本当に申し訳なかったと思う。ただ、常々おっしゃっていた作曲家や作品に対して常に真摯な態度で接すること、という教えは、今も僕が音楽に取り組む上での重要な基礎になっている。多先生が素晴らしい先生であることに疑いの余地はなく、今現在でも尊敬するピアニストの一人でもあり続けている。

その他影響を受けた方々
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